2024/05/17
【助成金が後押しに】進む国内の木材利用!環境問題への貢献と木造がもたらす健康効果
国内で木材利用の促進が進んでいます。木材の利用は日本の森林問題を解決し、持続可能な森林のサイクルを作るだけではなく、地球温暖化防止にも貢献します。
木材利用や木造建築の普及を後押しする助成金の紹介や、木材が持つ健康効果についても解説します。
日本国内で進む木材利用促進
日本は豊かな森林を有する国ですが、その木材資源を十分に活用できていないという問題を抱えています。また、地球温暖化における二酸化炭素排出量の削減は、日本でも大きな課題であることはご存じの通りです。
2010年、国は木材利用の促進と二酸化炭素排出量削減を目標として「公共建築物等における木材利用促進に関する法律(通称:木材利用促進法)」を制定しました。これに則り、公共建築物での木材利用が進み、公共建築物の床面積ベースの木造率は制定時の8.3%から、2019年には13.8%まで上昇しました。
一方、民間建築物では木材利用が低位にとどまっていた背景を受け、2021年には同法律の対象を民間建築物まで広げた「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材利用の促進に関する法律」に改正し、更なる木材の利用を進めています。
この法律ができる前後から、各所で木材利用を促進する動きが増えてきています。まずは国内でどのような動きがあるのか具体的に見ていきましょう。
森林・林業再生プランについて
日本では、戦後の復興需要に伴い森林伐採が行われた一方、大規模な植林が行われました。
その後、人工林が育ち森林資源として伐採・利用可能な段階に入ったにも関わらず、林業への関心や生産活動の低下により木材自給率は低迷し、2009年には28%まで落ち込みました。それを受け、農林水産省は木材資源の活用や林業の活性化、環境への貢献を目指し、林業発展のための計画「森林・林業再生プラン」を作成しました。
「森林・林業再生プラン」では、次の3つの理念の下に「コンクリート社会から木の社会」への転換を計るとしています。
・理念1.森林の有する多面的機能の持続的発揮
・理念2.林業・木材産業の地域資源創造型産業への再生
・理念3.木材利用・エネルギー利用拡大による森林・林業の低酸素社会への貢献
プランの中で、施業集約型・路網整備・人材育成を柱に、木材自給率引き上げを目指すとしました。その後、木材自給率は2011年から10年連続で上昇を辿り、2020年の木材自給率は41.8%となりました。
引用:林野庁
「木づかい運動」と「ウッド・チェンジ」
農林水産省の外局である林野庁は、森林の「伐って、使って、植えて、育てる」持続的サイクルを促進するために、木材利用の拡大を図る「木づかい運動」を展開しています。
「木づかい運動」の一環として行われているのが「ウッド・チェンジ」です。身の回りの物を木に変える、木を暮らしに取り入れる、建築物を木造・木質化するなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジしていく行動を指します。
法人施設などでの大手ゼネコンの木材実績
木材利用の関心やニーズの高まりを受けて、大手ゼネコンによる木造建築への参入が進んでいます。
例として、木造高層建築物として国大最大級となる地上17階建て、高さ約70メートルのオフィスビルの計画や、大学敷地内における有名建築家監修の2階建て木造建築の完成などがあります。
その他、工務店による、木材を利用したタワーマンション建築のプロジェクトが開始されるなど、建築業界全体で木質材料を利用した建築物が広がりを見せています。
木材利用「助成金」が後押しに
建築業界で木質材料利用拡大の後押しとなっているのが、国や各都道府県が設ける補助金・助成金制度です。助成金の例として、国土交通省「子育て支援型共同住宅推進事業」における費用の補助、東京都の「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」などがあります。
例えば「子育て支援型共同住宅推進事業」では、共同住宅を対象に、こどもの安全・安心確保に向けた設備や子育て世代の交流機会創出につながる設備を設置する場合に、費用の一部に対して補助を行っています。
また、東京都の「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」では、断熱設備や省エネ性能の高い設備を採用した人・環境に優しい都独自の住宅「東京ゼロエミ住宅」の基準を満たす都内の新築住宅(戸建て・共同住宅など)を対象に、助成金の交付を行っています。
その他、不燃化特区を対象とした不燃化助成や除却費助成(老朽化した建築物等の除却費用の一部を助成するもの)など行政や地区毎に助成制度があります。
※自治体ごとに異なる取り組みのため、詳細は各自治体のHPにてご確認ください。
木材利用・森林と災害・環境問題の関係
環境問題への高い興味関心が継続する昨今、森林と環境問題の関係の話題は避けて通れません。特に災害の多い日本では、災害時の森林の役割は大きいと言えます。
2011年に起きた東日本大震災での海岸林の働きも記憶に新しいでしょう。ここでは、森林と環境問題、自然災害の関係性をみていきましょう。
森林伐採と地球温暖化
森林と環境問題のひとつとして、森林破壊による地球温暖化や生態系の崩れがあります。世界的に見ると、農地転用のための森林伐採、大規模な森林火災などが、森林破壊の原因とされています。
大気中の二酸化炭素を吸収する森林が減ると、地球温暖化が進むだけではなく、野生の動植物が絶滅の危機にさらされるなど、生態系の破壊も起こります。
森林の防災機能
森林には自然災害を防いで、被害を小さくする働きもあります。具体的な森林の防災機能には、次のようなものがあります。
・土砂崩れの防止
樹木など植物の根が土壌をつなぎ止めて、土砂崩れの発生を防ぎます。しかし、日本では保有している森林の管理が行き届いていないことや、異常気象が原因で起こる土砂崩れが増えています。
・洪水予防
降水時に土壌に雨水を保水して、河川への流入が急激に進むことを防ぎ、洪水を起こりにくくします。
・防火
水分を含む森林が、火事の火が一気に広がるのを防止します。日本では防火林が江戸時代から利用されており、関東大震災などでも防火の役割をしたことが報告されています。
・津波、高潮予防
津波や高潮の予防や、威力を弱めて被害を軽減する働きもあります。2011(平成23)年の東日本大震災では、押し寄せる津波の勢いを海岸林が和らげました。また、津波で流されてきた漂流物を補足することによっても、津波の被害は小さくなりました。その後の実験でも、海岸林が津波の速度や波力を低下させて、到達時間を遅らせる効果も確認されています。
木材の伐採と利用が必要な日本
諸外国では、森林伐採や火災による森林の減少が主な問題です。一方で日本は、諸外国とは反対に森林の伐採が不足しているという、日本特有の森林問題を抱えています。
森林蓄積は増えている、海外とは違う日本の森林問題
日本は国土の67%を森林が占め、豊かな森林資源を保有している国です。森林面積はほぼ横ばいで推移しており、森林蓄積(森林の資源量)は増加しています。
資源量が増えるのはいいことのように思えるかもしれません。しかし、この森林蓄積の増加は、育っていく人工林(育成林)が十分に利用されていないことを意味しています。
森林資源があるにも関わらず、国産の木材利用が進まずに備蓄が増えていくことに、具体的にはどのような問題があるのでしょうか。
人工林が適宜伐採されないと木々の間にすき間ができず、森林内に光が届かなくなります。
すると土壌の根や育たずに土が流れやすくなり、土砂崩れが起こりやすくなります。また、下草(森林に生える丈の低い草木)が、雨による土砂の流出を予防するデータもあります。森林内に光が届かなければ、この役割を果たす下草も育ちません。
伐採が進まない日本の森林は、国民病と言われる花粉症とも関係があります。スギの木においては、樹齢30年を超えると花粉の量が増えると分かっています。日本に多く存在する樹齢30年以上のスギは、花粉の大きな発生源です。
森林の計画的な伐採と植林、そして伐採した樹木が木材として利用されるサイクルを創ることが、花粉対策として重要視されています。
日本の森林問題解決が地球温暖化の防止になる
引用:農林水産省
自国の森林資源の活用は、地球温暖化の防止にもつながります。
若い木は古い木よりも、多くの二酸化炭素を吸収します。現在すでに利用可能な状態にある人工林を伐採して木材として使い、新たに木を植えて森林を育てることで、大気中の二酸化炭素を持続的にたくさん吸収することができます。
また、樹木は大気中の二酸化炭素を取り込んで貯蔵する働きを持ち、この働きは木材に加工された後も無くなりません。木材を使った建築物が増えれば二酸化炭素貯蔵量が増え、結果として大気中の二酸化炭素が減ることになります。
さらに、木材は少ないエネルギーで製造・加工ができます。木材で材料を製造するときの二酸化炭素排出量は、鉄などに比べると大変少ないです。
自国の人工林の利用で、木材利用が進まないという日本の森林問題を解決しながら、環境問題である地球温暖化を防止する。そのような課題に私たちは直面しています。
木材利用のコストをどう考えるか
国内の木材利用が進まない背景のひとつには、「国産の木材は高い」というイメージがあります。しかし、本当に「国内の木材は高い」のでしょうか。木材利用にかかるコストに関しては、さまざまな点を加味して考える必要があります。
木材利用のコストを考えるときに鑑みること
引用:経済産業省
元来、輸入木材は為替変動や生産国経済の動向等により価格が大きく変動しており、輸入木材の利用で木材利用・木造建築のコストカットが叶うと、安易に考えられるものではありません。
また、ひとことで国産といっても、木材の価格は地域や材種によって異なります。どこの地域の何の材種を利用するかでも、コストは変わってくるのです。
木造建築の建築費では、設備工事費・人件費の占める割合が大きくなります。それらにコストをかけすぎないことや、設備工事費等の過剰なサービス提供に偏らない、適切な設計・施工者とパートナーシップを結ぶことが大切だと言えます。
木材利用のコストはお金だけでは測れない
先にお伝えしたように、国産木材の利用は、森林の持続可能なサイクルの実現と環境問題改善に寄与します。
さらには林業・地域事業を活性化する、住む人の健康に好影響を与えるといったメリットもあります。木材や木造建築が人に及ぼす健康効果については、次項で解説します。
木材利用・木造建築で期待される人間へのメリット
木材が人間の心身に与える良い影響も、木材利用・木造建築の大きな強みと言えます。健康志向、メンタルヘルスへの興味が高まる今、木材の健康効果は利用者・ユーザーへの大きなアピールポイントとなります。
木材の調湿性について
木材には湿度を調節する機能があります。湿度が高ければ水分を吸収し、反対に低ければ水分を放出します。湿度が高くなる夏には室内の湿度を下げ、乾燥する冬には湿度を上げて、一年を通して心地良い湿度を保つことができるのです。
また、湿度の高い部屋はカビの発生やダニの増殖につながり、結露も発生しやすくなります。反対に湿度が低いとインフルエンザなどのウイルスが飛散しやすく、病気にかかりやすい環境にもなります。木材の調湿機能は、室内の湿度の変動を防ぎ、健康的な住環境を保ちます。
アレルギー・気管支喘息・アトピーに対する効果
上記の通り、湿度が高い部屋ではダニの繁殖が盛んになります。室内で繁殖したダニは、その死がいや糞を含めてアレルギー性疾患の原因となります。ダニをアレルゲン(アレルギーの原因物質)とした代表的な疾患は、アレルギー性鼻炎・気管支喘息・アトピー性皮膚炎などです。
木材の調湿性によってダニが発生しにくい環境を作ることにより、アレルギー性疾患を引き起こしにくい住環境を作れます。
化学物質を吸い取りシックハウス症候群に対する効果
「シックハウス症候群」とは、建材などから発せられる揮発性の化学物質などによる住居内の空気汚染で起こる、さまざまな健康被害のことです。シックハウス症候群の症状には、めまいや吐き気、目や喉の刺激症状などがあります。
近年、RC住宅・鉄骨住宅といった気密性の高い建物が増え、シックハウス症候群が増加し、問題視されてきました。木材利用・木造建築は通気性がよく、これらの健康被害は起こりにくいと言えます。
芳香によるリラックス効果
木材には、リラクゼーション効果を持つ芳香成分「フィトンチッド」が含まれています。森林で感じられる、みずみずしい緑の香りがフィトンチッドです。
フィトンチッドにはストレスホルモンを減少させる・免疫力を上げる・免疫細胞の働きを向上させるといった健康効果の報告もあります。
他にもフィトンチッドは、消臭、防虫、除菌・抗菌効果なども持ち合わせています。木材利用・木造建築は、人間をリラックスさせ、ストレスや健康トラブルを軽減する「人に優しい」建物だと言えるでしょう。
まとめ
環境問題へのアプローチとして、森林の持続可能なサイクルなどの取り組みに、国内での木材利用が広がりを見せています。
タカマツビルドは、資産価値の高い木造建築の設計・施工を心掛けて、木材利用・木造建築を通じ、地球温暖化など環境問題への貢献と、お客様の豊かな人生を実現できる住まい創りをご提案・ご提供します。
森林の活用や二酸化炭素排出量の削減に貢献する、時代に合った木造アパートの経営をお考えの方は、ぜひタカマツビルドにご相談ください。