2024/04/12

【いまさら聞けない!】「耐火建物」と「準耐火建物」の違いとは?条件やメリット、防火構造との違いなど

準耐火構造 木造

木造でアパートの建築を考える場合、どうしても気になるのが「火災」への対策です。

一般的に「木造建築は火災に弱いのではないか」というイメージがありますが、昨今の技術進歩を背景に、木造でも充分に火災対策ができる「耐火建築物」「準耐火建築物」が増えてきています。

今回はこの「耐火建築物」「準耐火建築物」の特徴を整理しながら、一般的な木造建築とどのような違いがあるのかを解説していきます。

「耐火建築物」と「準耐火建築物」

木造建築物の防火・耐火性能は、「耐火建築物」「準耐火建築物」「その他建築物(一般木造)」の大きく3つに分けられます。

ここでは一般木造と区別される「耐火建築物」と「準耐火建築物」について解説していきます。

「耐火建築物」と「準耐火建築物」の特徴

まず、それぞれの特徴を整理しましょう。

耐火建築物

耐火建築物は、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)を「耐火構造(通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊および延焼を防止するために必要な構造)とする」という条件を満たした建築物を指します。

準耐火建物

準耐火建築物は、主要構造物が「準耐火構造(通常の火災による延焼を抑制するために必要な構造)とする」という条件を満たした建築物を指します。

「耐火建築物」「準耐火建築物」ではそれぞれ、「告示で定められた例示仕様」を満たし、「試験等により性能を確認したうえで、国土交通大臣の認定を受けたもの」である「耐火構造」または「準耐火構造」を満たしていることが求められます。

ここでの耐火構造、準耐火構造は、「一定時間の加熱に対する非損傷性、遮熱性、遮炎性などがどの程度確保されているのか」を表すものであり、それぞれに複数のレベルが設定されています。

これらの条件は建築基準法に記載されており、都市の発展や災害への対応等をきっかけとして都度改正が行われています。

例えば令和4年には、以下のような改正が行われました。

・構造計算が必要な木造建築物の規模の引き下げ
・中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化
・部分的な木造化を促進する防火規定の合理化

上記の中には、3000㎡超の大規模木造建築物において準耐火構造のみで火災の延焼を押さえる新たな構造方法を追加するなど、昨今の技術革新に合わせた改正も含まれます。

政府による木造建築推進の動きから見ても、今後より木造化を促進する改正が行われる可能性は高いと考えられます。改正の流れを把握し、最新の情報をしっかり確認するようにしましょう。

戸建住宅と共同住宅

木造建築物に求められる防火・耐火性能は、一般的な戸建住宅とアパートなどの共同住宅でも違いがあります。続いては、戸建てと共同住宅の違いを見ていきましょう。

戸建住宅に求められる基準

求められる防火・耐火性能は、延べ床面積や階数と大きく関係しています。戸建住宅の場合、3階建て以上の階数になるケースが少ないこともあり、基本的には準耐火建築物または一般木造での建築が可能です。ただし、都市部などの密集地に多い防火地域で建設する場合には、「耐火建築物または同等以上の性能を有する建築物」が必須条件となる可能性が生じますので、注意しておくとよいでしょう。

共同住宅に求められる基準

一方、共同住宅の場合、不特定多数の人が利用することから、基本的に戸建住宅よりも厳しい基準が設けられています。共同住宅は安全性の確保がより重要な「特殊建築物」に該当しており、一定の条件に当てはまる特殊建築物は「耐火建築物」または「準耐火建築物」でなければならないと建築基準法によって定められています。

指定地域と構造制限

必要な防火・耐火性能を正確に算出するためには、戸建住宅、共同住宅ともに、延床面積や階数、建設地などの条件を正確に把握する必要があります。特に建設する地域は、求められる条件に深く関わる分野です。ここからは、都市計画による指定地域と構造制限について見ていきましょう。

今回のテーマ「防火」に関連するものとして覚えておきたいのは、「防火地域」と「準防火地域」の2つです。

■防火地域
防火地域は、都市の中心にある市街地や主要な駅前、幹線道路沿いといった、大規模な商業施設や建物が密集し、交通量や人通りの多い地域が指定されます。

■準防火地域
一方、準防火地域とは、先述のようにとても厳しい条件が設定されている防火地域を囲むように存在しており、住宅などの建物が密集している市街地が指定されています。

これらの地域は、建築物の防火性能を高め、市街地における火災の延焼、拡大を抑制する目的で、都市計画によって定められています。防火地域と準防火地域における建築制限の条件は、以下の表の通りです。

防火地域 構造制限

参照:国土交通省 建築基準法(集団規定)

平成30年の建築基準法改正では、従来は耐火建築物を求めていたところに「耐火建築物相当の延焼防止建物」が、準耐火建築物を求めていたところに「準耐火建築物相当の準延焼防止建物」が含まれるようになりました。

新しく建物の施工に入る前には、建物自体の構造だけでなく、建築する地域の情報も正しく把握することが重要なのです。

「防火構造」「準防火構造」との違い

ここからは「耐火建築物」「準耐火建築物」と混同されやすいキーワードを見ていきます。まず、「防火構造」「準防火構造」との違いです。

「耐火構造」「準耐火構造」は、先述の通り、「耐火建築物」や「準耐火建築物」の基準として採用されている構造方法を指します。延焼火災を防ぐだけでなく、他の部屋への燃え広がりを防ぐなど被害の拡大を抑えるための条件が設定されています。

一方「防火構造」「準防火構造」は、建物の周辺で火災が発生した場合に、該当する建物に燃え移らないことを目的としたものです。外壁や軒裏に一定の防火性能を備えていることなどを基準としており、根本的な目的から異なっていることが分かります。

「省令準耐火建物」との違い

次に、「省令準耐火建物」との違いを見ていきましょう。

「省令準耐火建築物」は、勤労者財産形成促進法施行令の基準を定める省令に基づいた準耐火建築物のことを示しており、ここまでに紹介してきた建築基準法に基づく「準耐火建築物」とは異なるものです。

「省令準耐火建築物」に関する具体的な条件は、フラット35などの住宅ローンを提供する「独立行政法人住宅金融支援機構」が独自に定めています。

同じ「準耐火建築物」という言葉が使用されているので混同しやすいですが、管轄している省庁なども異なりますので気をつけましょう。

「耐火建物」「準耐火建物」のメリットと注意点

ここまで「耐火建築物」と「準耐火建築物」について詳しく見てきましたが、そもそもこの2つの建築物は一般木造といわれる「その他の建築物」と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

最後に、木造建築に「耐火建築物」「準耐火建築物」を採用するメリットと注意点を解説していきます。

「耐火建築物」「準耐火建築物」を採用するメリット

まず、木造建築に「耐火建築物」「準耐火建築物」を採用する主なメリットは2つあります。

火災に強い

1つ目はもちろん、「火災に強くなる」という点です。

木材はもともと組織内に多くの空気を含んでいるため、鉄に比べると熱を伝えにくく、酸素が供給される表面からゆっくり燃えていくという性質があります。たとえ火災が発生した場合でも、急激に強度が落ちることがないことから、木造建築は住まいの形状を長くとどめることができるという利点があるのです。

「耐火建築物」や「準耐火建築物」では、これらの性質をさらに活かすため、木材への着火温度を抑える対策や隣家への延焼を抑える対策が条件として設定されています。

木造建築の良さを活かしつつ、より火災に強い性能を兼ね備えているのが、「耐火建築物」「準耐火建築物」の特徴なのです。

火災保険料を抑えられる

2つ目のメリットとして挙げられるのは、「火災保険料を押さえることができる」という点です。

火災保険料の金額は、建物の構造によってもランクが分かれています。一般的な火災保険では、「耐火建築物」「準耐火建築物」に該当する建物のランクは、一般木造などの非耐火構造のランクよりも安い保険料になるように設定されています。

万が一の場合に発生する火災時だけでなく、継続してかかるコストの面からも「耐火建築物」「準耐火建築物」を採用するメリットは大きくなります。

「耐火建築物」「準耐火建築物」における注意点

次に、「耐火建築物」「準耐火建築物」を採用する際の注意点を見ていきましょう。

外観デザインに制限が発生する可能性がある

アパートなどに「耐火建築物」「準耐火建築物」の基準を採用する場合、最新の建築基準法に沿った条件に合わせた設計にする必要があります。

例えば、窓などの開口部に火災を遮る設備を取り入れる、共用部や居室の内装などに指定の材料を使用しなければならないなど、その条件は多岐にわたります。

土地の大きさや開口部の個数によっては、建築基準法の条件を満たすために外観デザインにある程度の制限が加わる可能性もあります。

居室だけでなく、外観のデザインも入居者にとっては重要なポイントのひとつです。きちんと基準を満たしつつ、入居者にとって魅力的なデザインを叶えるためには、経験豊富な専門家に相談するとよいでしょう。

リフォーム時にも条件を維持する必要がある

アパートなどの特殊建築物の場合、新築する場合だけでなく、リフォームやリノベーションを行う際にも建築基準法に基づいた制限がかかります。

外観デザインの章でも触れたように、内装に使用する材質を防火性能を備えたものにするなど細かな指定があります。一定の条件を満たせば要件が緩和させる場合もありますが、こちらも新築時と同じく、延床面積や地域などの条件が複雑に関係しています。

場合によってはリフォームよりも建て替えを検討した方がコストを抑えられることもありますので、すでに経営している共同住宅をお持ちの場合は、専門家の力を借りることも含めてご検討ください。

まとめ

建築物の防火・耐火性能の基準は、大規模な災害や環境問題などを契機として、時代に合わせて見直しが繰り返されてきました。

現行の法令を正しく理解し、適格な構造を採用した建築計画を立てることは、長期的な経営コストを抑えるだけでなく、利用者にとっても魅力的なアパート経営につながっていきます。

タカマツビルドでは、これまでの豊富なノウハウや正しい知識をもとに、オーナー様のご希望に合わせた最適なご提案を実施しております。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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