2024/03/22

地震は倒壊より火災が危険?東日本大震災にみるアパート経営のリスク対策

アパート経営 自身

東日本大震災から13年。アパート経営を始めるにあたって、地震へのリスク対策は重要です。特に、地震が引き起こす火災は、建物に大きな被害をもたらします。

しかし、そもそも日本は地震大国。アパート経営をするなら「地震はどこでも起こりうる」という前提で備えることが大切です。

・アパート経営を始めたいけれど地震が心配…

・有効な地震対策はなんだろう?

・検討することが多すぎて何から始めればいいかわからない!

地震に備える上で、このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は東日本大震災を例に挙げながら、地震による建物被害の実態や大規模火災の発生原因について詳しく解説。さらに、具体的な地震対策をご紹介いたします。

この記事を読めば、地震による火災リスクに対して適切な対策を講じることができるでしょう。

東日本大震災で「揺れ」による建物倒壊は少なかった

東日本大震災で全壊した建物は、約13万棟にもおよびました。そのうち約12万棟が津波による倒壊です。

人口密度や地形などの条件が異なりますが、東日本大震災においては、阪神・淡路大震災と比べて地震の揺れが直接的な要因で建物が倒壊したケースは少なかったという調査報告が上がっています。

しかし、地震による被害を受けた建物の数は、決して少なくはありません。東日本大震災の教訓を活かすためにも、被害が多かった建物の特徴を見ていきましょう。

建物被害に差が出た「新耐震基準」と「旧耐震基準」

地震の揺れにより被害を受けた建物の建築年度を調べると、リフォームにより「新耐震基準」に適合するよう耐震強度を高めた建物は、被害が少ない傾向にあります。一方、「旧耐震基準」で設計された建物には被害が多く見られました。

実は、旧耐震基準が適用されていたのは「1981年5月31日まで」とかなり昔です。建築に関する法律が改正されていくように、建物自体も最新の安全基準にアップデートすることが必要でしょう。

新耐震基準により設計した建物の被害

東日本大震災では新耐震基準で設計した建物においては、基礎、柱、梁、壁体など、家屋の主体となる構造部分への地震の被害はほとんど見られませんでした。

一方で、新耐震基準はクリアしていても現行の耐震基準「2000年基準」に適合していない建物は地震による被害が多い傾向にあります。

2000年基準とは、1995年に発生した阪神・淡路大震災における被害を受けて木造住宅の耐震性基準を改正したもので、2000年6月の建築確認から適用。以下のような基準が厳格に定められました。

  • 基礎の仕様
  • 柱と土台の接合部の仕様
  • 耐力壁配置のバランスのチェック

以下は2016年熊本地震におけるデータです。同じ新耐震基準でも、2000年を境に、劇的に木造建築物の被害が減少したことがお分かりいただけるでしょう。

熊本地震 木造建造物被害

出典:東京都耐震ポータルサイト

ここで東日本大震災に話を戻し、新耐震基準で建てた木造建築物における被害状況について詳しくご覧いただきます。

木造建築物

新耐震基準で設計した建物においても、造成宅地などの軟弱な地盤の土地では「地盤沈下」や「不同沈下」の被害が多く見られました。

特に建物が傾いてしまう「不同沈下」は、壁にひびが入ったりサッシが開かなくなったりと、建物への多大なダメージを与えます。

山を削ってならした「切土」は地盤が固いため、被害を受けにくい傾向ですが、土で谷を埋めて造成した「盛土」は地盤が比較的軟らかいため、特に注意が必要です。

2000年基準の導入により地盤調査も実質的な義務となっているため、2000年6月以降に建築確認が行われた建物は地盤の強さに適合したものであると言えるでしょう。

木造以外の建築物

木造以外の構造の建物も、新耐震基準に適合したものはほとんど被害がありませんでした。報告された被害の一部には、ALC(軽量気泡コンクリート)パネルやタイルなどの外装が落下したり、構造部材への軽いひび割れが生じたりしたものがあります。
参考:総務省消防庁 東日本大震災記録集 3.3 物的被害の状況 

東日本大震災における火災被害

東日本大震災では、地震をきっかけに発生した「火災」も甚大な被害をもたらしました。 震災から建物を守るためには、耐震性を高めると同時に「火災を発生させない」「建物を燃えにくくする」ということが重要です。

大規模な地震では、火災が同時多発する可能性が高まります。消防車が到着するまでに時間がかかったり、道路が寸断されて消防車両が通行できなくなったりするため、火災を未然に防ぐことが大切です。     

ここからは「地震火災」について、特徴や原因を解説します。

電気火災(通電火災)

東日本大震災の出火原因は、電気に関係したものが半数以上を占めていたことが報告されています。

出火原因が特定された地震火災のうち、阪神淡路大震災では 約61%、 東日本大震災では約54%、熊本地震では約56%が電気により発生したものです。

電気火災の引き金には、以下のようなものがあります。

  • 電気器具・設備の損傷により漏電・火花が発生して着火
  • 電気コードが引っ張られ断線し発熱・発火
  • 電気ストーブ・電気コンロに可燃物が落下して着火
  • 水槽の転倒によりコンセントに水がかかって火花が発生・ 着火 

裸火が原因で発生する火災は、火を扱っている場所に誰かしら人がいることが多いため、火災が発生してもすぐに初期消火できます。

一方、電気が原因で発生する火災は、平常時であっても誰もいない時に起こりやすい厄介な火災です。

例えば、冷蔵庫や水槽のヒーターなどは常時電源を入れておくことが必要で、通電したままで外出することが一般的です。電気コンロやオーブントースターに関しても、毎回使用後にコンセントを抜く人は多くありません。

たとえ在宅してたとしても、災害であれば避難前にブレーカーを落とす余裕などがないため、電気火災に対する初期対応は困難です。それゆえ、電気火災は被害が拡大しやすい災害と言えます。

さらに、地震に伴う停電が発生した場合、電気が復旧した際に発生する「通電火災」が非常に危険です。通電火災とは、地震により可燃物が落下し覆いかぶさった電気ストーブや、断線した電気コードなどに再び電気が通ることが原因で発生する火災を指します。

電気が復旧しても、住人が避難などで不在の場合、通電火災に対して初期消火ができずに延焼してしまうのです。

もらい火による火災

所有している建物からの発火がなくとも、近隣の火災による「もらい火」で被害を受ける危険性があります。

もらい火のリスクは地震時に限ったものではないので、建物の外壁部分に防火性の高い素材を使用しなければなりません。

アパートにおいて、外部からの火災を遮断する「木造耐火構造」の必要耐火性能は、建築基準法により厳しく規定されています。

ガスコンロ・石油ストーブなど裸火よる燃え移り火災

ガスコンロや石油ストーブなどの裸火による火災は、被害が大きくなる条件が揃いやすくなります。

ガスコンロを使用するのは、食事の時間に合わせ、各家庭だいたい同じ時間帯に集中します。そのため、朝や夕方に地震が発生すると、火災が多発して消火が遅れかねません。

また、石油ストーブを使用する冬は、空気が乾燥し風が強くなる季節です。そのため、火災が発生しやすく、また燃え広がりやすい状況です。

地震による火災リスクに設備・建築材料で備える

このように地震に関連する火災には、さまざまな原因が複雑に絡み合っていることが分かります。

したがって、アパートを経営する際には、入居者や近隣地域の方々の生命や財産、そして建物自体を地震による火災から守るための対策が不可欠です。

感震ブレーカーで「電気火災」を防ぐ

停電後は、十分に安全を確認してから電気を使用する必要があります。しかし、避難中などで連絡が取れない入居者様がいらっしゃると、建物全体の安全確認が遅れてしまうことがあります。

そこで活躍するのが、「感震ブレーカー」です。

​​感震ブレーカーを設置すると、強い揺れを感知した際に自動的に電気が遮断されます。

たとえ避難時にブレーカーを切り忘れても、電気が復旧したときに電化製品や断線したコードが発火の原因となる「通電火災」の原因を根本から断つことができるのです。

また、感震ブレーカーを設置することで、入居者様がいち早く 日常の生活を取り戻せる のも大きなメリット。各住戸に感震ブレーカーを設置していれば、安全を確認できたお部屋から順次に電気をご利用いただくことが可能となります。

感震ブレーカーは、国の方針としても普及が進められている有効な防災設備の一つです。全国の各自治体では、感震ブレーカーの設置を支援するさまざまな取り組みも行われています。電気火災のリスク軽減のために、感震ブレーカー設置の検討をおすすめします。
参考:内閣府防災情報 大規模地震時の電気火災の抑制の方向性について(報告) 

 建物の耐火性能を高めて「もらい火」を防ぐ

特に延焼のおそれのある外壁や軒裏の耐火性能を高めることで、もらい火のリスクを軽減できます。

2000年の建築基準法改正により、木造の耐火建築物を建築することが可能になりました

その後、木造耐火に関する告示により、せっこうボードを用いた木造耐火構造建物の主要構造(外壁・間仕切り壁・柱・床・はり・屋根・階段)の使用が告示化されています。

木造建築の耐火性能は、木質構造の表面を、せっこうボード2枚張りで覆うなど、規定の仕様にすることで向上させることが可能です。

せっこうボードは耐火性がある不燃材料であり、耐力壁としても認められている地震対策に非常に適した建築材なのです。

その他、耐火構造の建物は、火災保険料が安くなるだけでなく、防火地域に建築可能になるメリットもあります。

地震による経済的被害に保険で備える

地震に備えるためには、建物への物理的な対策だけでなく、金銭的な対策も欠かせません。しっかりと保険に入ることで地震に備えましょう。 

火災保険

実は、火災保険への加入は義務ではありません。しかし、万が一火災が起きた場合、建物の修繕や建て直し費用がかかるだけでなく、多額の賠償責任を追わなくてはならないことも考えられます。そのため、賃貸経営をする以上、火災保険への加入は必須と言えるでしょう。

地震保険は、国と民間保険会社が共同運営しているため、どこで加入しても補償内容も保険料も同じです。

一方、火災保険は民間保険会社の商品であるため、さまざまな保証内容があります。あらかじめ用意されたパッケージ商品だけではなく、

  • 火災
  • 破裂
  • 爆発
  • 落雷

といった基本的な補償内容に「特約」をつけることで保険をカスタマイズできる保険商品も増えつつあります。地域の特性に合わせて水災特約をつけるなどし、無駄なく必要な補償を追加するといいでしょう。

地震保険

「地震保険は高いから入らないでおこうかな…」と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際、2022年における地震保険の世帯加入率は35%ほどにとどまっています。しかし、大地震が発生してしまえば巨額の損害が発生する可能性が高いので、慎重な判断が必要です。

地震保険では、以下のような火災保険では補償できない地震が原因で受けた損害を補償します。

  • 地震が原因で建物が倒壊・破損
  • 地震が原因で発生した火が建物に延焼
  • 地震が原因で発生した津波で建物が転倒

大地震が発生すると、民間保険会社だけでは背負いきれない巨額の補償額となるため、地震保険は政府と民間保険会社が協力して運営する保険となります。

地震保険は、火災保険への加入が前提です。セットで加入して万が一の被害に備えることをおすすめします。

【地震保険の概要】
地震保険の対象は居住用の建物(マンション共用部分を含む)と家財です。
火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・ 拡大した損害は補償されません。
地震保険は、火災保険に付帯する方式での契約となりますので、火災保険への加入が前提となります。地震保険は火災保険とセットでご契約ください。すでに火災保険を契約されている方は、契約期間の中途からでも地震保険に加入できます。
地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することにより成り立っています。

引用:財務省ホームページ 地震保険制度の概要 

まとめ

以上、東日本大震災の事例を交えて、建物被害と耐震基準の関連や火災対策などについてご紹介してまいりました。

「アパート経営における地震対策のポイント」を、3つにまとめると次の通り。

①耐震だけでなく「防火・耐火」の対策も同時におこなう

②「感震ブレーカー」や「耐火構造」で火災リスクを減らす

③火災保険には「地震保険」を付帯する

この記事を読んでいただいたことで、どのように地震に備えればよいのか、おおまかにお分かりいただけたと思います。

アパート経営をする際は、地震に限らず様々なリスクへの対策が必要です。そのため、アパート建築に関する相談は、実績のある建築業者を選ぶのがおすすめです。

タカマツビルドでは、これまでの豊富なノウハウから、オーナー様お一人おひとりに合わせた最適なご提案をいたします。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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