2023/12/29

【木造は火事に弱いは古い?】今の木造アパートの耐火性とは?火災リスクに備えるチェックポイント4点

「木造アパートは火事に弱い」とお考えではありませんか?

実は、木材を使用した建築物は火災時に燃えにくく、倒壊しにくい建物です。

日本での火災状況を踏まえて、木材における倒壊・全焼のリスクの低さや進化する木造建築について解説します。火災リスクに備えるためのチェックポイントもご紹介しますので、木造アパート経営をお考えの方はぜひご覧ください。

 

 

火災件数の現状

まず日本における火災件数の現状を確認しておきましょう。

総務省消防庁による『令和2年版 消防白書』によると、2009(平成21)年の出火件数は51,139件でしたが、2019(令和元)年は37,689件でした。つまり10年間で日本の火災は減少傾向にあります。

引用:総務省消防庁「[火災の現況と最近の動向] 令和2年版 消防白書」

こちらのグラフにおける「火災」の件数には住宅だけでなく、森林や畑、船舶といった様々な場所での出火も含まれていますので、より詳しい資料も見てみましょう。

以下の表によると、火災によって「全焼」した住宅は10年間で8,433棟から7,404棟と減少しています。

引用:総務省消防庁「令和2年版 消防白書[火災の現況と最近の動向]」

減少傾向の理由は様々ですが、火災予防の法律が整備されていることが一因だと考えられます。例えば2009年に施工された建築基準法22条では、住宅の屋根や壁に燃えにくい素材を使用することが義務付けられています。

参照:e-Gov法令検索「建築基準法第22~27条」

減少理由が建築基準法だけだとは言えませんが、火事に強い住宅が10年前に比べて増えているのは事実だと言えるでしょう。

火災の原因ランキング

次に火災の原因を確認しておきましょう。

同じく総務省消防庁による『令和2年版 消防白書』によると、2019(令和元)年中の出火件数37,683件のうち、火の消し忘れや火気の取り扱いの不注意による火災は全体の7割でした。

引用:総務省消防庁「令和2年版 消防白書[4.出火原因]」

出火原因別に見ると、最も多い原因はたばこです。次いでたき火やこんろが出火原因となっています。

同資料内では、たばこは「不適当な場所」への放置が火災につながっているという報告も記載されています。

アパート構造別の耐火性

続いて、アパート構造ごとに耐火性を確認しておきましょう。耐火性とは、建物そのものの燃えにくさを示す言葉です。

なおアパートの構造には、大きく分けて4種類あります。鉄骨鉄筋コンクリートの「SRC造」、鉄筋コンクリートの「RC造」、鉄骨のみの「S造」、そして「木造」です。

中でも「木造」は耐火性が低いというイメージがあります。例えば「令和3年版 消防白書」においては木造が最も出火件数が多くなっており、木造の耐火性についてはマイナスイメージがつきやすいのが現状です。

引用:令和3年版 消防白書「資料1-1-43 火元建物の構造別損害状況」

しかし各構造の詳細な定義や、築年数といった情報が反映されていないため、上記のデータだけで木造の耐火性を言い切ることはできません。

木造アパートは火に弱いのか

火災が減ってきているとはいえ、木造アパートは他の構造に比べて火災に弱いというイメージは根強くあります。しかし本当にそうでしょうか?

他のデータも参照しながら確認していきましょう。

木材が燃えても鉄骨より倒壊するリスクが低い

木造アパートは万が一火災になったとしても、鉄骨より倒壊するリスクが低いというデータがあります。外部からの熱に対しては、鉄よりも木材の方が遥かに耐久性が高いことが関係しています。

下記の図は、加熱時に鉄と木材の強度が下がる割合を示したデータです。青い線の鉄は、10分間で10%にまで強度が低下。木材も低下しているものの、10分経っても80%もの強度を保持していることがわかります。鋼や鉄は高温に弱く、熱伝導率が木材よりも高いため、短時間で柔らかくなってしまうからです。

つまり火災が起こった際、SRC造などの建物は短時間で形を維持できなくなってしまう危険性があります。一方で、木造建物は鉄骨より倒壊リスクが低いと言えるのです。

引用:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「木造建築の防耐火性(木造建築は火災に弱くない)」

加えて倒壊の危険性が低いという点は、人命救助や修復の可否においても重要なポイントです。消防隊が到着するまでや、消火活動が行われている間に倒壊してしまうと、内部に逃げ遅れた人が出たり、人的被害が大きくなったりする危険性があります。また建物の修復も難しくなるでしょう。

リスクや将来性まで見据えても、木造は有益な選択肢です。

木材は炭化すると燃えにくい

木造建築は火災時の倒壊リスクが低いことがわかりましたが、なぜでしょうか?木材は炭化すると燃えにくい、という性質があるのです。

木材は水分を多く含んでおり、簡単に火がついたり、一度に燃え尽きたりしない特徴があります。例えばたき火をするときをイメージしてください。いきなり太い薪に火をつけても燃え上がりませんよね。また、火がついてもすぐにボロボロになることもありません。

もし木が燃えてしまっても、まず表面が黒く炭化していきます。炭化した部分(炭化層)の特徴は、空洞を多く含んでおり、熱を伝えにくくする点です。よって木の内部へと燃え進めるのを抑制してくれます。

したがって木造建築においては、火災が起きても一気に燃え広がるのを防ぎ、倒壊する危険性を低くしてくれると言えます。

進化する木造建築

木造建築は倒壊リスクが低いということが分かりましたが、実はその建築技術はさらに進化し続けている分野です。詳しく見ていきましょう。

技術開発が進む「木造耐火構造」

「木造耐火構造」とは、万が一火災が起こっても、一定時間倒壊させずに建物を維持する技術のことです。建築基準法では、建物の高さによって1~3時間の耐火性能が定められています。本項目では2つのタイプをご紹介します。

被覆型

代表的なタイプが、被覆型(メンブレン型)です。建物の支持部材を木材としつつ周囲を石膏ボードなどの不燃材料で覆い、木材が燃えないようにする技術です。

ただし木材を覆ってしまうため、木の温もりや表情といった部分が見えなくなってしまうデメリットがあります。

引用:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「木造建築の防耐火性(木造建築は火災に弱くない)」

燃え止まり型

被覆型のデメリットを克服するために開発されたのが、燃え止まり型です。木構造支持部材の周りを石膏ボードなどで囲うまでは被覆型と同様ですが、さらに燃え代となる木材で覆うことで、木の表情を見えるようにしました。

もし火災となっても燃え代部分の木材が炭化することで中へ火が通りにくくなり、石膏ボードなどの不燃材料がさらに熱を吸収します。この2つの素材によって建物を支える中心の木材を熱から守り、倒壊のリスクを低くするという技術です。

つまり燃え止まり型は火災の進行を防ぐことができるうえ、木のデザイン性も十分に引き出すことができる技術と言えます。

なお支持部材を鉄骨として周りを木材で覆う木質ハイブリッド型もありますが、あくまで鉄骨建築になります。

ツーバイフォー(2×4)工法も耐火に強い

以上の「木造耐火構造」に加えて、ツーバイフォー(2×4)工法も耐火に強いことがわかっています。ツーバイフォー工法とは、2インチx4インチの木材を組み合わせるアメリカの工法です。

従来の軸組みは、柱と梁、そして筋交いといった縦・横・斜めの木材で建物を支えていました。しかしその枠組みが火の通り道となってしまうデメリットがあります。

一方でツーバイフォー工法は、壁や床といった面で建物を構成する方法です。面の部分には石膏ボードなどの不燃材料を使用するため、火災が起きても別の部屋へと燃え進めるのを防ぐことができます。

アパートの火災リスクを考えるポイント

木造建築が火災に弱くないという点を解説してきました。本項目では、アパート経営をするうえで考えるべき火災リスクのポイントを4つ、改めてご紹介します。

倒壊・全焼にかかる時間

まず倒壊するリスクや全焼にかかる時間を考慮しましょう。アパートが火災で全焼・倒壊してしまうと、修復が難しくなったり、逃げ遅れた人の被害が増えたりする危険性があるからです。

先述したように、木材は一般的なイメージと異なり、燃えにくい素材です。炭化することで火災の進行を防ぐことができ、強度の低下も鉄骨に比べてとてもゆるやかです。よって木造でアパートを建築しても、火災時の倒壊のリスクはかなり低いと言えます。

もらい火

次にもらい火についても考慮しておきましょう。どんなに火災に気をつけていても、隣家が火災になった場合は、もらい火によって自分が経営するアパートも巻き込まれる危険性があるからです。

例えば隣の敷地や道路で火災が起きた際、「延焼のおそれのある部分」として以下の部分が指摘されています。

延焼のおそれのある部分 隣地境界線から 道路中心線から
建物の1階 3m 3m
建物の2階以上 5メートル 5メートル
参照:e-Gov法令検索「建築基準法第2条第6号」

つまり上記の表に示した部分はもらい火になる恐れがあるため、十分なスペースを取ったり、防火対策をしたりする必要があります。ただし住宅密集地で敷地に余裕がない場合は、アパートを構成する素材で対策するしかありません。

建築基準法では、もらい火の予防法として遮炎性能のあるガラスで窓をつくったり、防火戸を取り入れたりすることが義務付けられています。

もちろん被害をゼロにすることは難しいですが、木造アパートは延焼や倒壊のリスクも少ないため、住宅密集地では有益な選択肢となり得ます。

補修時のコスト

さらに補修時のコストも考えておきましょう。アパートが火災になった場合、どれだけ被害が出たかによって補修にかかるコストは変わります。例えばアパートが全焼・倒壊してしまうと、補修はできません。

万が一火災になったとしても、延焼を防ぐことができる耐火性能が高いアパートなら、一部分の補修だけで済むでしょう。炎が燃え広がるのを食い止める時間が長ければ長い程、消火活動も進み、被害も最小限に抑えられます。

木造アパートは鉄骨に比べて倒壊の危険性が低く、延焼を防ぐ技術も進化しているため、補修時のコストは低くなると考えられます。

火災保険料

そして火災保険料も考慮しましょう。火災保険料はアパートの構造ごとに料金が変わります。一般的に柱などが鉄骨やコンクリートであれば料金は低くなり、木造だと割高になる傾向です。

しかし基準を満たした耐火建築物の木造アパートなら、比較的低い料金で保険に加入できます。所有するアパートが耐火建築物かどうかは「建築確認申請書」などに記載されているため、一度確認しておくと良いでしょう。

まとめ

木造アパートには、未だに火事に弱いというイメージがあります。

しかし万が一火災になった場合には、木材が炭化することで鉄骨よりも倒壊のリスクが低くなり、強度も落ちにくいということがデータとしても証明されています。

また木造耐火構造やツーバイフォー工法のように、今後もさらなる技術進歩によって、より安全で、より安心な木造建築が増えていくことが期待されます。

建築物の木造化は、脱酸素・カーボンニュートラルが重要視されるこれからの社会において、ますます注目を集めると言われています。

火災のリスクに備えるポイントを踏まえて、上手なアパート経営を目指しましょう。

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